科目残高を合わせることの大切さ

月次の監査や決算時など科目残高をチェックする機会は多いのですが、なぜ残高を合わさなければならないか考えたことがありますか。今回は、会計処理のなかでもかなり重要な手続きになる科目残高チェックについてお話します。

科目残高を合わせる意味

科目残高を合わせるというゴールは一緒ですが、立場や状況によって科目残高を合わせる意味は変わってきます。この意味を理解しておかないと「毎月見てくれてるのに残高が合ってないことに気づかなかったんですか?」という事態を招きます。ここでは、会計事務所の立場と担当者や経営者の立場でおはなしします。

会計事務所の立場での意味

科目残高を合わせる意味や目的はなんでしょうか。「残高が合っていないと気持ち悪いから」という主観論は置いといて、この意味をこたえられる人、とりわけ会計に携わる人は意外にもそう多くありません。

もちろん、簿記をはじめ会計に関するさまざまな勉強しているので表向きの答えはできますが、例えば顧問先の担当者や経営者に対してとなると答えに窮してしまう場面も見受けられます。

会計に携わる人の立場で回答すると「会社の財務状態を正しく表示させるため」となります。わかりやすいたとえで言うと、形状金額を間違えた場合、早ければ翌月、遅くとも数か月後には異常が表面化します。

金額を間違えているので損益は変わってきますし、損益が変われば貸借対照表も変わってきます。このように科目残高を合わせる意味は、会社の財務状態を正しく表示させるためとなります。

顧問先の立場での意味

一方、顧問先の担当者や経営者の視点で考えると、「債権が回収できているか」「支払い漏れはないか」となります。ただし、以前は会計ソフトを使って債権債務の管理をしていた企業も、現在は、市販の債権債務管理ソフトを導入しています。

ここで齟齬が生まれるのですが、会計ソフトを使っていた時は、”仕訳=科目残高”になっていたので残高に差異が生じた場合は仕訳を修正することで残高を修正できていました。

しかし、会計と債権債務を別のソフトで管理するようになると債権債務ソフトでは残高は合っているけど会計ソフトでは差異が生じているという事態が起きてしまいます。

こういった事態を避ける意味で、債権債務を別ソフトで管理している場合は、漏れのないチェック方法を確立しておく必要があります。

残高差異を永遠に引きずってしまう恐怖

前項で少し触れましたが、科目残高を合わせなかったときの影響についてもおはなししておきます。前述の金額間違いのケースで言うと、債権(売掛金)は修正されるまで永遠に引きずってしまいます。

仮に5年間放置していると5年間ずっと修正すべき差額を引きずることになります。

1年目 正:54,000円 誤:43,200円 差異:10,800円
2年目 差異:10,800円
3年目 差異:10,800円
4年目 差異:10,800円
5年目 差異:10,800円

取引が一件で差異のある取引先の件数が少ない場合はすぐに把握できますが、いくつも取引をしている場合は、差異が取引に埋もれてしまい把握するのが困難になります。

少なくとも毎月残高チェックをしていると差異の把握はできますが、まとめて処理しようとするとひとつひとつの取引を判別するのも時間がかかってしまい、そのうち放置してしまう事態を招きます。

外部に提出するときは特に注意

中小企業では外部に決算書を提出するのは、新規の取引の際や金融機関へ提出するとくらいですが、提出の際は科目残高が合っているか十分に調査して提出しないとあとあと大変なことになってしまいます。

提出される側の立場で考えてみると、提出された財務諸表はさまざまな数値の分析を用いて評価されます。少なくとも提出された財務諸表をもとに判断するしかないので客観的に評価されますが、ここで残高に差異があると正しい評価がされないばかりか間違った判断をされてしまいかねません。

さらに、科目ごとに明細の提出を要求されることもあるので取引先ごとの残高の差異があると口頭での説明と整合が取れないなど不都合が生じることもあります。

簡単な残高チェック方法

本来は一件ずつ補助科目元帳などを使って残高を確認するべきですが、もっと簡単に調査する対象を絞る方法があります。方法は、会計ソフトの補助科目残高一覧と入金サイトを利用する方法です。

入金サイトが一か月の場合は、月末残高は当月計上額になっているはずなので、「当月計上額=月末残高」になっているかを確認すれば差異は把握できます。

この方法を用いれば顧問先の入金サイトに合わせて補助科目残高一覧を出力するだけで大まかな差異分析ができるので一件ずつ確認する必要はありません。

これを毎月つなぎ合わせれば簡単な年齢表も作成できます。

あとでやればという甘い考えは禁物

残高の差異が見つかるプロセスができている場合を除いて基本的は毎月各取引先ごとの残高は確認するべきです。特に会計事務所側でチェックする際は、関連帳票をもとに差異が発見できる(顧問先には残高が正しいことの証明というべきです)仕組みを構築しておくことをおすすめします。

決算でまとめてやればいいや、四半期ごとにやればという甘い考えは禁物です。可能なら今すぐにでも始めるべき確認業務ですし、仕組みを構築してしまえば意外とルーチン業務化できる内容です。