税理士と公認会計士の資格に興味があるあなたは、その資格についてどんなことを知っていますか。どんなことを知りたいですか。また、どんな事を知るべきでしょうか。
これから書かれている内容は、あなたが最終的にどちらかの資格を選ぶ際に必要となる情報が書かれています。表面的なイメージだけではなく業界の動向も踏まえた具体的な指針をつかむ内容になるよう書いています。
これから進むべき道がどちらなのか、必要な情報をどう収拾していけばいいのかをしっかり意識して読み進めてください。
<これから確認するべき5つのこと>
- この業界に進むときに必要となる資質はどんなものか。
- 資格取得に必要となる資格はなにか。
- 実際の仕事はどんなことをしているのか。
- 将来的に安定した仕事ができるのか。
- 業界の今後の展望はどうなるのか。
- 公認会計士試験に合格した者(免除された者を含む)であること
- 実務経験(業務補助等)の期間が2年以上ある者であること
- 実務補習を修了し、内閣総理大臣の確認を受けた者であること
税理士と公認会計士の違い
同じ会計の数字を扱う仕事ですが、両者は法律でも明確にわけられています。ここでは、税理士と公認会計士の仕事の違いについてお話します。
税理士とは
税金のプロフェッショナルといわれる税理士は、納税者が税金を納税する際のサポート役という重要な役目があります。税務署の回し者といわれるゆえんはここにあります。
税務署では行き届かない複雑な税金の取り扱いについて税務署に代わって監督指導する立場にもあるため誤解を受けてしまうことが多々あります。
税理士が税のプロフェッショナルといわれる最大の理由は、税金に関する独占業務が認められていることです。税理士の独占業務は下記のとおりです。
<独占業務>
税務代理
税務書類
税務相談
※税理士法 第2条、第52条で規定
それぞれを詳しく見ていきます。
税務代理
法定期日までに提出しなければならない法人税、所得税、消費税などの税金計算と申告、申請、請求、不服申し立てや税金に関する主張や陳述の代理・代行
税務書類
法定期日までに提出しなければならない申告書、申請書、請求書、不服申立書、変更等があったときの異動届、税制度選択の各種届出書などの作成
税務相談
税計算や税解釈など税に関するアドバイス
その他付随業務
税理士業務に付随して財務に関する業務
前述した独占業務以外に税理士業務の付随業務として財務諸表作成、給与計算、登記申請があります。それぞれの詳細は下記のとおりです。
財務諸表作成
複式簿記により作成された外部開示用の書類いわゆる決算書の作成や付随して総勘定元帳、補助元帳、勘定科目内訳書、事業報告書も作成します。
<一口メモ>
決算書は、一般的に定義された複式簿記により作成するため最終的な決算書の当期利益は、変わらないはずですが、税理士が作成する決算書は、税金計算用の決算書になっているという点が異なってきます。その理由は、企業会計と税法とでは収入から控除できる費用項目の認識の違いがあるため、税理士が決算書作成時に、税法上の損金不算入(税務上費用にならない)項目を計上しないまたは税法上損金算入(税務上費用になる)される限度額までを計上して決算書を作成することが多々あるためです。税理士が携わる多くの中小企業は、この税理士が作成する決算書によって作成されています。
平均収入
税理士としての働き方は、税理士法人などに務める勤務税理士と独立開業する開業税理士があります。ここでは、両者の平均収入についてお話します。
勤務税理士
税理士法人、他の会計事務所に勤める勤務税理士の平均年収は約500万円といわれています。
開業税理士
独立開業している税理士の平均年収は、規模や専門分野があるのすべてを含めて平均化は難しいのですが、おおよそ1000万円といわれています。
ただし、分布は300万円から1億以上までとかなり幅広い分布になっている状況での平均なので、開業して1000万円稼ぐというのはかなり難しい状況です。
<情報元>
KAIKEI NET 「開業税理士の年収」と「勤務税理士の年収」の実態
http://www.kaikeinet.com/topics/20130501-2811.html
公認会計士とは
会計のプロフェッショナルといわれる公認会計士は、企業や各種特殊法人、地方公共団体が作成した財務諸表が企業会計原則に則って正しく作成されているか調査し、その結果を書面にして意見表明すること、すなわち監査業務が主な仕事となります。
公認会計士が、会計のプロフェッショナルといわれる最大の理由は、監査に関する独占業務が認められていることです。公認会計士の独占業務は下記のとおりです。
<独占業務>
監査業務
※公認会計士法第2条1項及び2項に規定
監査業務を詳しく見ていきます。
監査業務
企業や各種特殊法人や地方公共団体が作成した損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を企業や各種特殊法人や地方公共団体とは独立した第三者の立場から適正であるか意見を表明する業務です。
企業や各種特殊法人や地方公共団体の複雑か、大規模化に伴い監査法人に依頼するケースも増えてきていて公認会計士単独での監査業務は少なくなってきています。
前述した独占業務以外に公認会計士業務の付随業務として会計業務、コンサルティング業務、税務業務(税理士登録した場合)があります。それぞれの詳細は下記のとおりです。
会計業務
複式簿記により作成された外部開示用の書類いわゆる決算書の作成や付随して総勘定元帳、補助元帳、勘定科目内訳書、事業報告書も作成します。
コンサルティング業務
企業や各種特殊法人、地方公共団体の経営に関する立案・指導・助言などをおこなう経営コンサルタント業務や、株式公開コンサルティング、システムコンサルティングなど監査業務の際に培ったノウハウを使ってさまざまなコンサルティング業務をこなっています。
税務業務
税理士登録することで、前述した税理士の独占業務を含めた税務代行などをおこなうことができます。
平均収入
公認会計士としての働き方は、監査法人に勤務する場合と独立開業する場合があります。ここでは、公認会計士の平均収入についてお話します。
勤務公認会計士
監査法人に勤務する公認会計士の平均年収は、約800万円といわれています。
<情報元>
平均年収.jp 公認会計士の年収
http://heikinnenshu.jp/shi/kaikeishi.html
税理士・公認会計士の資格取得に必要資格を理解
税理士になるには「税理士試験合格(下記の科目のうち5科目の合格)」をもって税理士資格が与えられます。
必須科目
簿記論、財務諸表論
選択科目
選択必須科目
法人税または所得税
選択科目
相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税(地方税法)、事業税(地方税法)、固定資産税(地方税法)
※ただし、消費税法と酒税法、事業税と住民税はいずれかひとつのみ選択可
試験免除
試験免除とは、税理士試験合格者以外に下記の要件を満たすものには試験を受験することなく税理士資格を与えると規定された制度です。
学位取得
大学院なので必要な学位を取得したなど要件を満たす場合に選択科目の試験免除が受けられます。必須科目についてはこの適用はありません。
税務署勤務
税務署に23年以上務めた職員は試験免除されます。
弁護士
弁護士登録ができるものは試験免除されます。
公認会計士
公認会計士登録ができるものは試験免除されます。
科目合格制
税理士試験には、科目合格制という独自の制度があります。合格した科目の合格は永久に抹消されないという制度で毎年1科目ずつ取ることも可能です。この制度を利用して受験する社会人の受験生も多く見受けられます。
<情報元>
国税庁 税理士の登録
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/seido2.htm#a-2
合格率
国税庁が発表した平成26年度の税理士試験の科目ごとの合格率は下記のとおりです。どの科目だいたい10%‾20%前後となっています。
<科目ごと合格率>
簿記論:13.2%
財務諸表論:18.4%
所得税法:13.2%
法人税法:12.4%
相続税法:12.9%
消費税法:10.3%
酒税法:13.0%
国税徴収法:13.2%
住民税:8.7%
事業税:13.5%
固定資産税:14.8%
<情報元>
国税庁 平成26年度(第64回)税理士試験結果
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka2017/01.htm
公認会計士になるには
公認会計士資格登録をするには下記の公認会計士試験合格者で実務経験と補助業務を経て終了考査に合格したものとなります。
短答式試験必須科目
財務会計論
管理会計論
監査論
企業法
租税法
短答式試験選択科目
経営学
経済学
民法
統計学
論文式試験必須科目
会計学(財務会計論及び管理会計論)
企業法
租税法
論文式試験選択科目(1科目選択)
経営学
経済学
民法
統計学
実務経験・補助業務
一定の要件の実務経験・補助業務が必要となります。
詳細はこちら
で確認してください。
下記の要件を満たしたうえで日本公認会計士協会に備えられている名簿に登録を受けることが必要です。
試験免除
短答式試験
財務会計論:税理士の資格を有する者、税理士試験の簿記論及び財務諸表論の合格者及び免除者、大会社・国・地方公共団体等で会計または監査に関する事務または業務等に従事した期間が通算で7年以上になる者
財務会計論・管理会計論・監査論:会計専門職大学院で
1.簿記、財務諸表その他の財務会計に属する科目に関する研究
2.原価計算その他の管理会計に属する科目に関する研究
3.監査論その他の監査に属する科目に関する研究
により、上記1.に規定する科目を10単位以上、2.及び3.に規定する科目をそれぞれ6単位以上履修し、かつ上記1.から3.各号に規定する科目を合計で28単位以上履修した上で修士(専門職)の学位を授与された者
短答式試験免除:司法試験合格者
論文式試験
租税法:税理士となる資格を有する者
経済学または民放:不動産鑑定士試験合格者
企業法及び民法:司法試験合格者
1.公認会計士試験合格
2.実務要件2年間
3.補習所通学(原則3年間)
4.修了考査合格
<情報元>
公認会計士の資格取得に関するQ&A
http://www.fsa.go.jp/ordinary/kouninkaikeisi/
合格率
平成26年度の公認会計士試験合格率は、10.1%となっていてここ数年は上昇傾向にあります。
<情報元>
公認会計士・監査審査会 平成 29年公認会計士試験
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/ronbungoukaku_29/02.pdf
受験資格
税理士科目受験の受験資格は下記のとおりです。
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学に属する科目を1科目以上履修した者
・大学3年次以上の学生で法律学又は経済学に属する科目を含め62単位以上を取得した者
・専修学校の専門課程(1修業年限が2年以上かつ2課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る。)を修了した者等で、これらの専修学校等において法律学又は経済学に属する科目を1科目以上履修した者
・司法試験に合格した者
・公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年度以降の合格者に限る。)
・公認会計士試験短答式試験全科目免除者
・日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
・社団法人全国経理教育協会主催簿記能力検定試験上級合格者(昭和58年度以降の合格者に限る。)
・会計士補
・会計士補となる資格を有する者
<情報元>
受験資格について
https://www.nta.go.jp/sonota/zeirishi/zeirishishiken/qa/qa03.htm
公認会計士試験の受験資格
受験資格の制限はありません。
勉強法
税理士試験
税理士資格取得の勉強法としては、独学と予備校利用のふたつが挙げられます。科目合格制度があることから働きながら1科目ずつの取得を目指す方もいますが、多くは予備校を利用しているのが現状です。理由を探っていきましょう。
自分の時間を使って勉強スケジュールを立てられることから費用を抑えたいと考える方が選択を考える方法です。実際、税理士試験合格者の中にも独学で合格した方がいるのも事実です。
市販されている問題集では広く深い税理士試験のすべてを網羅することはむつかしく、試験に関する情報収集(税法改正の対応や解き方、考え方など)もむつかしいことから予備校に通う方が多いのが現実です。
逆を言うと、予備校に通うと効率よく受験勉強ができ、試験に関する情報も予備校側がある程度まとめてくれるので受験勉強に集中できるということになります。受験勉強に集中する時間買うためにお金を使うと考えるのもひとつではないでしょうか。
公認会計士試験
公認会計士試験取得の勉強法としては、独学と予備校利用のふたつが挙げられます。一般的に公認会計士試験に合格するためには、3000時間の勉強時間の確保必要といわれています。
簿記の資格を持っていない基礎知識のない状態での独学はあまり現実的ではないのが実情です。そのため、予備校利用を選択することになると思います。不明点の解決や改正点の理解など予備校側で用意してくれますので効率よく学習に集中することができます。
合格後の進路
税理士資格取得後
会計事務所に勤務
会計事務所のスタンスにもよりますが、基本的には税務業務、会計処理をおこないます。例外的に給与計算や支払業務などアウトソース業務をおこなう会計事務所もあります。税務会計だけではなく企業に関する業務に幅広く携わることができます。
税理士法人に勤務
企業税務だけではなく、個人資産の税務など専門的な知識や経験が幅広く得られます。また、海外専門の部署あるなど国際税務の習得も可能です。
個人開業
取得後すぐに開業することは、家業でしているなど特定の事情がある場合を除きあまりありませんが、上記の会計事務所や税理士法人に勤務しながら知識や経験だけではなくクライアントも持てるようになったら独立となります。
事務所を大きくしていくにはクオリティの高い仕事をすることはもちろん、クライアント獲得の営業も行わなければなりません。現在は、会計事務所向けのクライアント紹介業務などもあるので利用するものひとつです。
公認会計士資格取得後
監査法人に勤務
大手企業や特殊法人などの監査業務に携わって知識や経験を高めていくことができます。スキルや経験年数などから主任、マネージャーなどのキャリアアップをすることができます。
個人開業
株式式公開やM&Aなどコンサルティング業務を主として開業する方もいますが、税理士登録もして税務も兼ねて開業する方も多くいます。税理士登録した場合の業務内容は税理士の個人開業と同様です。
事業会社
税理士資格取得者の場合は、おもに大企業の経理に勤務すること多くそれまでに培ってきた税務知識を思う存分披露できます。
公認会計資格取得者は、大企業の経営企画、CFOなどマネージャーとしての地位で活躍する方が多く、特にM&Aや組織再編など高度な財務調査能力が必要となる部署でのニーズが高まってきています。
また、IPOを目指すベンチャー企業でIPO支援や内部統制構築などに携わることもあります。
業界の展望
現状
資格取得者数
税理士の登録者数は、全国で約7.5万人、公認会計士は全国で約3万人となっています。
取り巻く環境
前述の登録者数でもわかるように税理士は飽和状態にあります。ほとんどの税理士は独立しているため定年というものが基本ありません。そのため、税理士登録者の入れ替えがなかなか進まないのが現状です。
進まないとどうなるかというと新たに独立開業する税理士に回ってくるクライアントが少なくなってしまうということにもつながり、実際独立開業後も仕事がないため勤務税理士になるという方も少なくありません。
また、近年大企業に限らず中小企業も海外進出する企業が増えてきており情報収集がむつかしい海外税務ができない税理士の仕事が限られてくるということも出てくるかもしれません。
公認会計士については、株式公開の緩和により今後株式公開をする企業が増えてくると予測されており株式公開には監査が必須となるため、公認会計士の業務も増えると予想されています。
大手の監査法人だけではなく中堅クラスの監査法人にも仕事を増やすチャンスがあるため今後資格取得者の数が増えてくると思います。また、IFRSの導入により国際会計基準への対応も急務となります。
開業を目指す方は、前述のようにしばらくは税理士業務は飽和状態が続くため、コンサルティングに特化することをお勧めします。会計監査時に培うさまざまな手法はコンサルティングをおこなう際にたいへん有利になります。
将来
税理士
取り巻く環境で述べたように、海外進出する企業が増えていることもあり、海外税制の習得が急務となっています。海外税制を取り扱う税理士は限られているため、ほぼ大手の税理士法人や経験した税理士の独占状態となっています。
海外税制の知識や経験を積んでいくには大手の税理士法人に勤務するほうが効率的だと思います。これから税理士資格を目指す方は、税務や会計の知識だけではなくほかに得意分野を作ることをお勧めします。
得意分野は会計事務所に勤務中に作られてくると思いますので、そのことを常に意識しておくことが大切です。
公認会計士
取り巻く環境でも述べましたが、税理士登録して開業という選択肢はかなり厳しいものがあります。そのため、得意分野でもあるコンサルティング業務に特化することを考えてみたほうがいいと思います。
今までは上場会社にのみ適用されていた監査や財務デューデリジェンスも中小企業ようにアレンジして適用することで今までにないサービスの提供ができるように思います。さらにIFRS導入により海外進出する中小企業の支援も可能となります。
これから公認会計士を目指す方は、将来開業なのか、監査法人にいるのかなど将来の岐路の際に正しい選択ができるよう常に意識する必要があります。
まとめ
税理士と公認会計士についてお話しました。
会計業界自体は今後よほどの進歩がない限り形は変わっても、なくなるということないと思います。ただし、会計業界で生き残っていくには、根幹となる税務や会計の知識や経験を日々研鑽していくことは当然として、最低でももうひとつ核となるスキルを身に着けることを意識するべきだと思います。
現時点では何ができるのかということは想像できないと思います。いま何をするのかを固めるというより、何ができるかを日々探すという意識付けが大切だということです。
就職活動時に多くの面接で聞かれる質問のひとつですが、「わが社があなたを採用するメリットはなんですか?」にも十分答えられると思います。
資格取得までの道のりも長く険しいものですが、資格取得後もそれほど安泰というわけでもありません。まして毎年資格取得者が出てくることを考えると埋もれてしまうということもあり得ます。
この記事を読んだ学生の皆さんにはできるだけ多く会計業界で活躍してもらいたいと思っています。
この記事があなたの進むべき道の参考資料になればうれしい限りです。